海外安全対策情報(平成30年1月~3月

海外安全対策情報(平成30年1月~3月)
 
1 社会・治安情勢
  1. テロ等の傾向
ア パキスタンのテロ事件発生件数はパキスタン軍等によるテロリスト掃討作戦により、2009年をピークに減少傾向にあるものの、今期も多数のミリタント等が殺害されたほか、複数の潜伏拠点が破壊された。テロの件数等は前期(2017年10月~12月期)に比して16件減少(92件→76件)し、死者も31名減少(146名→115名)したほか負傷者も181名減少(352名→171名)した。(パキスタン平和研究所調べ。)また、昨年2月から開始されている軍及び治安機関等による対テロ作戦(ラード・ウル・ファサード(Radd-ul-Fasaad))は引き続き国内各地で実施されており、テロリストの検挙、武器等の押収等一定の成果を収めている。今期においても、単独又は少数犯による自爆、襲撃及び簡易爆弾(IED)攻撃が主要なテロの手段として見られ、その標的は軍・治安当局とその関連施設がほとんどであったほか、ポリオワクチン接種チーム及び民間人に対するテロも数回発生した。また、カシミールのパキスタン・インド管理ライン(LoC)では依然として両軍による局地的な衝突が断続的に発生しており、今期も多数の民間人が死傷するなど、今なおカシミールにおける両国の軍事的な緊張は続いている状況である。
イ 今期、当館管轄地域では、ラホールで自爆テロが発生したほか、引き続きKP州及び連邦直轄部族地域(FATA)を中心に多くのテロが発生した。犯行形態の多くは、軍又は治安当局を主な標的とする自爆、IED及び標的殺人といった手法であった。また、治安当局によるテロリストの拘束事件及び武器・弾薬等の押収事件が前期に続き多く確認された。こうした状況から、治安当局による厳格な対応は確認される一方、都市部においてもテロの脅威は存在し、テロの可能性は排除されないと考えられる。
(2) デモの傾向
当地では、主に金曜礼拝後、各種団体による政府機関に対する労働環境改善要求等の抗議活動が行われる傾向にある。今期においては、首都イスラマバード近郊において大規模なデモが発生したほか、小規模なデモは国内各地で行われた。
〇 1月9日、パンジャブ州カスールで少女が暴行・殺害された事件への警察
の不手際を非難する住民による抗議デモが10日間に亘り行われた。デモ隊
はパンジャブ州議会議員及び下院議員の自宅に押し入り、家屋や車両に火を
つけるなどして暴徒化した。また、同抗議デモは、イスラマバードやラホー
ルなど国内主要都市にも広がった。
 
 
2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
 (1) 邦人被害事案
   なし。
(2) 銃器使用犯罪
本期間においても、前期と同様に銃器を使用した犯罪及び押収事案が相次ぎ、特に主要道路から離れた路地等人通りが少ない場所においては、その危険性が高い。主要都市部においても、銃器を使用した強盗事件(ガンポイント)や侵入強盗事件が散発的に発生しており、今期は、多くの外国人が使用するマーケットにおいても強盗事件が発生した。治安当局は継続的な銃器の取締りに取り組んではいるものの、違法に所持し摘発されるケースが後を絶たず、違法銃器の蔓延が問題となっている。
(3) 招き入れ型侵入犯罪
イスラマバードは富裕層が多く居住しており、各家屋には警備員やドライバー等の使用人を雇っている家主が多いが、これら使用人が犯罪者側と共謀し家屋内に招き入れて犯罪に荷担する事件が時折発生している。昨年9月にも、ラワルピンディ市内において、中国人が帰宅途中に金品を強奪され、警察による捜査の結果、同中国人の元運転手が事件の手引きを行っていたことが判明した。
(4) 名誉殺人
当地では、親が認めない相手との交際などで、家族の名誉を汚したとして女性又はその交際相手が殺害される名誉殺人が後を絶たない。パキスタンの保守的なイスラム社会では、毎年数百人の女性が名誉殺人の犠牲になっており、今期も凄惨な殺害事件が発生している。
(5) 性犯罪及び虐待
当地では、強姦を含む性犯罪及び虐待事件が頻繁に報道され、その発生件数は多いと言える。同種事件の被害者は、二次被害のおそれ等から警察に届け出ないことも少なくなく、実態は把握できていない。
(6) その他
本期間においても連日、不法な銃器・薬物・酒類の押収事案が報じられた。
 
3 2018年3月から2018年3月月までのテロ事件発生状況
 
 4月   26件、死者  46名、負傷者  49名
 5月   39件、死者  71名、負傷者 107名
 6月   19件、死者 117名、負傷者 244名
 7月   43件、死者  86名、負傷者 122名
 8月   36件、死者  70名、負傷者 136名
 9月   25件、死者  32名、負傷者  74名
10月   31件、死者  59名、負傷者 142名
11月   32件、死者  51名、負傷者  78名
12月   29件、死者  36名、負傷者 132名
2018年
 1月   27件、死者  40名、負傷者  70名
 2月   24件、死者  38名、負傷者  46名
 3月   25件、死者  37名、負傷者  55名
               (出典:パキスタン平和研究所)
 
4 安全を考える上で参考となる事件等(報道ベース)
(1) 1月5日、印軍は、LoC沿いで発砲し、女性住民2名が負傷した。
(2) 1月10日、パンジャブ州カスールで、8才の少女が4日から行方不明となり、その後暴行・殺害され9日に遺体で発見された事件に関し、警察の不手際を非難するカスール住民が抗議デモを行った。抗議者は警察署、病院、商店等に押しかけ、車両に火をつけるなど暴徒化した。これに対し警察が発砲し、デモ隊2名が死亡、3名が負傷した。
(3)  1月15日、印軍は、LoC沿いで発砲し、通信設備の作業に従事していたパキスタン軍兵士4名が死亡した。
(4) 1月19日、印軍は、アーザード・ジャンム・カシミール(AJK)の複数セクターとパンジャブ州シアルコートのLoC及び実効支配境界線(WB)沿いで発砲し、住民4名が死亡、20名以上が負傷した。
(5) 1月20日、印軍は、AJKの複数セクターとパンジャブ州シアルコートのLoC及び実効支配境界線(WB)沿いで発砲し、住民6名が死亡、25名以上が負傷した。
(6)  1月21日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、住民2名が死亡、乳児
を含む3
名が負傷した。
(7)  2月7日、FATA北ワジリスタン管区で、パトロール中の軍車両がミリタントにより銃撃され、乗っていた兵士2名が死亡、3名が負傷した。
(8)  2月10日、印軍は、AJKのLoC沿いの3地点で民間人を対象に一方的攻撃を行い、3名が死亡した。
(9)  2月15日、FATAオラクザイ管区中部Tormast地区で道路沿いからのIED攻撃があり、部族長老1名が即死、もう1名が病院で死亡し、他に長老1名とその子息が負傷した。被害者一行は、車でハング(Hangu)に移動する途上であった。オラクザイ管区では過去数か月で8名の平和委員会に属する部族長老が爆殺されている。
(10)  2月16日、FATAバジョール管区で、路上に仕掛けられていた爆弾が遠隔操作により爆発し、付近を車両で通行中だった平和委員会メンバーが死亡した。
(11) 2月19日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、少年1名が死亡した。
(12) 2月23日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、住民の青年1名が死亡した。
(13) 2月27日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、住民の少年1名が死亡し、1名が負傷した。
(14) 2月28日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、パキスタン軍兵士2名が死亡した。
(15) 3月1日、印軍は、AJKのLoC沿い他で発砲し、住民2名が死亡し、5名が負傷した。
(16) 3月14日、ラホール市内ライウィンドの警察のチェックポイントで、自爆テロが発生し、警官5名を含む9名が死亡、20名以上が負傷した。自爆犯は、宗教行事が行われている会場の警察チェックポイントに近づき、会場内に入ろうとしたところを警官に制止され、その直後に自爆した。
(17) 3月17日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、住民1名が負傷した。
(18) 3月17日、パキスタン北西部FATAモハマンド管区において、5人組の
犯人がポリオワクチン接種チーム(計7人)を待ち伏せし、医療従事者2人を殺害し、3人を誘拐した。2人(1人は運転手)は現場から避難し無事であった。
(19) 3月18日、印軍は、AJKのLoC沿いで発砲し、住民10名が負傷した。
 
5 誘拐・脅迫事件発生情報
 当地では、パキスタン人が誘拐される又は誘拐後に殺害されて発見される事件が断続的に発生しており、誘拐事件発生に関する報道は比較的多い。誘拐・脅迫事件の背景としては、過激派又は武装組織による誘拐事件を利用した政府等への要求又は資金稼ぎを目的として犯行に及ぶケースの他、単に一般犯罪者が、強姦等の性犯罪や身代金目的で行うケースがある。このような誘拐事件は、解決までに多大な労力・時間を要すると共に、誘拐された被害者が殺害される可能性もあることから、事件に遭わないための安全対策が重要である。
 
6 日本企業の安全に関わる諸問題
これまでのところ、邦人及び日系企業に対する脅威情報には接していない。しかしながら、昨年5月にクエッタにおいて中国人の誘拐・殺害事件が発生したほか、同年7月にも、カラチ市内の幹線道路において中国人技術者を対象とした爆発事件が発生するなど、外国人が、事件に巻き込まれるケースも発生していることから、活動地域の最新の治安・安全情報の入手を欠かさず、安全を第一に考えた行動方針を定め、先ずは事件に遭遇しないための対策を講じるとともに、万が一の事態を想定した具体的な警備・連絡体制を確立することが重要である。
また、当国政府の政策として、外国人の入域を制限している地域が国内各地に存在し、そのような地域に政府からの事前の許可を得ず(又は事前通報をせず)入域した場合には、現地治安当局による安全対策がなされないばかりか、速やかな退去を命ぜられたり、また犯罪に巻き込まれた際に通常の警察活動が期待出来ない場合があるので、当国政府の規定に従い、事前に然るべき手続きを行うことが必要である。なお、手続きを行ったにもかかわらず、政府からの入域許可が得られない場合には、安全上の問題が生じる可能性があるため、当該地域への入域は控えることが望ましい。
(以上)