松田大使離任の御挨拶
令和3年10月22日
松田大使離任の御挨拶
この度、約2年10か月の当地での勤務を終え、離任することになりました。この間の皆さまからいただいた御支援、御厚情に対して心より御礼申し上げます。
海外におられる邦人の皆様の安全の確保は、外務省にとって最も重要な責務の一つです。この点、私の任期中、世界的な新型コロナウイルス感染症の大流行や、タリバーンによるアフガニスタン制圧による地域情勢の不安定化の中で、我々の領事サービスが、皆様の安心した生活の実現に貢献できるよう努めて参りました。また、昨今の隣国情勢の変化もある中で、当地の治安状況につきましても、皆様への迅速な注意喚起や治安維持・改善のため、当地の軍・治安機関と緊密に連携をとってまいりました。今後とも、当館として皆様の安全・安心にお役に立てるよう精進してまいります。
経済関係については、残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響で、人の移動や経済活動が大幅に制限されてしまいました。しかしその反面、日本を含め、世界中で「働き方」が大きく変わったことにより、日本企業がインターネット等を介し、オンラインでパキスタンの優秀な人材を活用する事例も増えてきました。パキスタンの人口は2億2千万人を超え、消費市場としての可能性を秘めるとともに、人口の実に60%以上が30歳以下と豊富な人材を擁しています。これら巨大な消費市場や豊富な人材の活用が進めば、日・パキスタン双方の経済に良い影響をもたらすことは間違いありません。さらに、経済協力分野では、特に日本の強みとする水・衛生、保健、教育、防災及び輸出産業の基盤整備の5本柱を中心に、パキスタンの経済・社会基盤の改善に向けた協力を行いました。このようなパキスタンへの協力が、双方向での貿易投資の促進といった二国間経済関係の拡大に貢献することを期待しております。
さらに、この2年10か月を通じて、パキスタンだけでなく地域全体の安定を目的とした、防衛分野での交流も着実に強化されました。本年2月にパキスタン海軍主催多国間海上軍事演習(AMAN21)へ海上自衛隊の護衛艦が初めて参加したことはその最たる例です。また、アフガニスタンからの邦人の皆様及び日本関係者の方々の避難における協力を通じても、自衛隊とパキスタン軍との間の絆は一層強固になりました。
このように、私の任期中に大使館とパキスタン政府との協力を通じて撒かれた種が、近い将来花開くことを願ってやみません。特に来年は日パキスタン国交樹立70周年の記念すべき年です。この素晴らしい機会に、政治、経済、文化、安全保障等様々な分野で日本とパキスタンとの間で協力が進展することでしょう。ワクチン接種の拡大をはじめ各政府や国民の努力により、日本もパキスタンも新型コロナウイルス感染症の脅威を少しずつ克服しつつある中、政治レベルでの人的往来再開やビジネス関連の人的往来の活発化が一刻も早く実現し、両国関係の強化に弾みがつくことを願っております。
パキスタンの方々はいつも私を歓迎し、大変友好的に接してくれました。そして、邦人の皆様にも大使館の仕事に多大なるご理解とご支援をいただきました。改めて心から感謝いたします。今後の日パキスタン関係の更なる発展を祈念し、私の離任挨拶とさせていただきます。
パキスタン駐箚日本国特命全権大使
松田邦紀