第71回自衛隊記念日レセプション大使スピーチ
令和7年11月4日
第71回自衛隊記念日レセプション大使スピーチ
(2025年10月30日)
チーフゲスト、軍関係者、武官団、関係者の皆様、第71回自衛隊記念日レセプションへの参加に心より感謝を申し上げます。1954年の自衛隊発足以来、71回目となる自衛隊記念日をパキスタン軍関係者、各国関係者の皆様と共にお祝いできることを嬉しく思います。
まずはじめに、この夏の洪水によりパキスタン国内の広範な地域に甚大な被害がもたらされ、多くの尊い命が失われたことに哀悼の意を表するとともに、お見舞いを申し上げます。被災地域の一日も早い復旧をお祈りします。パキスタンと同様、毎年のように甚大な自然災害に直面している日本として、引き続きパキスタンの防災能力の向上と復興を支援していきたいと考えています。
今年は第二次世界大戦後80年の節目となる年です。荒廃の中にあった終戦時から今日まで、日本国民は決して戦争の惨禍を繰り返さないとの決意の下、一貫して平和国家としての道を歩んで参りました。
自衛隊は平和主義を堅持しつつ、国内外の安全保障上の役割を担ってきました。1990年代以降は国際平和維持活動(PKO)や災害派遣など役割を広げ、日本国民及び世界の人々に信頼される組織として成長を続けてきました。国内の安全と国際社会への貢献を両立する存在として、更なる進化を続けています。
自衛隊は、パキスタンとの関係では、2010年の洪水被害に対する国際緊急援助活動として物資の空輸支援を行いました。2023年にはトルコで発生した地震災害に際し、パキスタン軍と協力してパキスタンからトルコまでテントの空輸を実施しました。また、訓練の面では、今年2月に実施された多国間演習AMAN25に海上自衛隊の護衛艦「むらさめ」が参加し、パキスタン海軍との交流を深めました。5月には、パキスタン国防大学の国家安全保障・戦争コース(National Security and War Course)の研修生一行が訪日しました。今後、12月には防衛当局間協議が開催される予定であり、こうした防衛協力・交流を更に充実させて参ります。
パキスタンと日本は、国連を中心とする多国間主義、法の支配など価値観を共有する部分も多いと認識しています。両国は、アデン湾、ペルシャ湾等の海賊対処・対テロ作戦を主導する国際的な枠組みである連合海上部隊の一員として地域の海洋安全保障に積極的に貢献しています。また、国連平和維持活動のミッションへの軍人の派遣、PKO要員の能力構築支援など国際平和の維持にも大きく貢献しています。こうした分野で協力関係を発展させ、地域の平和と安定に効果的に寄与していくことが重要です。
ご来場の皆様、日本は軍縮・不拡散の推進を重視し、戦後一貫して核兵器のない世界の実現に向けて取り組んでいます。先の戦争において、我が国の広島及び長崎に原子爆弾が投下され、二十数万の貴い命が奪われました。街は焦土と化し、これらの人々の夢や明るい未来が容赦なく奪われました。一命をとりとめた方々のその後の人生にも、筆舌に尽くし難い苦難の日々をもたらしました。 80年前の広島と長崎にもたらされた惨禍、人々の苦しみは、二度と繰り返してはなりません。「核兵器のない世界」の実現に向けて努力を着実に積み重ねていくことは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命です。「核兵器のない世界」への道のりがいかに厳しいものであったとしても、我々はその歩みを止める訳にはいきません。ここパキスタンでも核軍縮に向けた機運を高め、「核兵器のない世界」の実現に向けて一歩でも前に進んでいきたいと思います。皆様の御理解と御支援をお願いします。
さて、日本では、今月13日まで大阪関西万博2025が開催されました。美しい万博会場では、人間や環境に優しい最新のテクノロジーが多数出展され、2500万人超の来場者に深い印象を残しました。その中で、パキスタンは「一粒の塩の世界に広がる宇宙」をテーマに、ピンク・ソルトを使用したパビリオンを出展し、累計150万人を超える来場者が訪れ、大変な人気を博しました。万博への御協力に感謝申し上げます。万博の期間中、5月にはジャム・カマル・カーン商業大臣、8月にはマリヤム・ナワーズ・パンジャーブ州首席大臣及びハルーン・アクタル・カーン産業・生産担当首相特別補佐官が訪日するなど、ハイレベルの訪日が相次ぎ、日本とパキスタンの関係が更なる発展に向け大きく動き出しました。
日本では10月21日、高市早苗自由民主党新総裁が首相に選出され、日本で初めて女性の首相が誕生しました。高市新総理の下、相互尊重と相互協力の考えに基づいて、日本とパキスタンとの絆が一層強固なものへと発展していくことを期待しています。
最後に、第71回目となる自衛隊記念日レセプションに際し、核のない平和な世界の実現と今後の両国関係の更なる発展を祈念し、私の挨拶とさせていただきます。

